Top >>ACリソース >>診断あれこれ >>子ども虐待の後遺症・複雑性外傷後ストレス障害 |
複雑性外傷後ストレス障害 1. 全体主義的な支配に長期間(月から年の単位)服属した生活史。実例には人質、戦時捕虜、強制収容所生存者、一部の宗教カルトの生存者を含む。実例にはまた、性生活および家庭内日常生活における全体主義的システムへの服属者をも含み、その実例として家庭内殴打、児童の身体的および性的虐待の被害者および組織による性的搾取を含む。 2. 感情制御変化であって以下を含むもの ●持続的不機嫌
●自殺念慮への慢性的没頭 ●爆発的あるいは極度に抑止された憤怒(両者は交代して現れることがあってよい) ●強迫的あるいは極度に抑止された性衝動(両者は交代して現れることがあってよい) 3. 意識変化であって以下を含むもの ●外傷的事件の健忘あるいは過剰記憶
●一過性の解離エピソード ●離人症/非現実感 ●再体験であって、侵入性外傷後ストレス障害の症状あるいは反芻的没頭のいずれかの形態をとるもの 4. 自己感覚変化であって以下を含むもの ●孤立無援感あるいはイニシアティヴ(主動性)の麻痺
●恥辱、罪業、自己非難 ●汚辱感あるいはスティグマ感 ●他者とは完全に違った人間であるという感覚(特殊感、全くの孤立感、わかってくれる人はいないという思い込み、自分は人間でなくなったという自己規定が含まれる) 5. 加害者への感覚の変化であって以下を含むもの ●加害者との関係への没頭(復讐への没頭を含む)
●加害者への全能性の非現実的付与(ただし被害者の力関係のアセスメントの現実性は臨床家よりも高いことがありうるのに注意) ●理想化あるいは逆説的感謝 ●特別あるいは超自然的関係の感覚 ●信条体系の受容あるいは加害者を合理化すること 6. 他者との関係の変化で以下を含むもの ●孤立と引きこもり
●親密な対人関係を打ち切ること ●反復的な救助者探索(孤立・引きこもりと交代して現れることがあってよい) ●持続的不信 ●反復的な自己防衛失敗 7. 意味体系の変化 ●維持していた信仰の喪失
●希望喪失と絶望の感覚 出典:ジュディス・L・ハーマン著、中井久夫訳『心的外傷と回復』(みすず書房) |