複合型PTSDのカテゴリー
B・ファン・デル・コルクらは、現在のPTSDの診断基準を拡大して、児童虐待が生み出すさまざまな症状を「複合型PTSD」という名称のもとにまとめている。 1. 情動・衝動の調節に関する障害 a 情動の統制障害(抑うつ感、躁状態など)
b 怒りの調整障害 c 自己破壊性(自傷行為、嗜癖など) d 自殺願望 e 性的関わりへの調整障害(過度で自己破壊的な性行動、性倒錯など) f 危険な状況へ自ら飛び込む衝動(トラウマへの嗜癖) 2. 注意・意識に関する障害 a 健忘
b 離人症 c 一過性の解離のエピソード 3. 身体化 a 消化器系(潰瘍性大腸炎など)
b 慢性痛(頭痛など) c 心肺系(喘息など) d 転換症候(歩行障害、失声など) e 性的症候(性的不能、性欲動昂進など) 4. 自己認識に関する障害 a 無力感(自分には自分を守る力さえない、と思う)
b 癒すことの不可能な自己損傷の感覚 c 罪悪感と罪責感(自分の過ちのためにトラウマが起きた、と思う) d 羞恥感(本当の自分は、人前にさらすことが恥ずかしいような存在だ、と思う) e 誰も自分を信じない、と思う f 自己卑下(自分など生きるに値しない存在だ、と思う) 5. (トラウマの)加害者についての認識に関する障害 a 加害者の歪んだ信念の採り入れ(パワーで人を支配するという考え方、など)
b 加害者を傷つける願望にとらわれる c 加害者を理想化する 6. 他者との関係における障害 a 他人を信頼することの不能
b 他人を犠牲者(被害者)にする c 自分が再び犠牲者(被害者)になる(トラウマへの嗜癖) 7. 意味システム(世界観)における障害 a 自暴自棄、絶望感
b 以前の自分を支えていた信念体系の喪失 出典:斎藤学『アダルト・チルドレンと家族』(学陽文庫) van der Kolk, B.A. & Fisler, R. E. :Childhood abuse and neglect and loss of self-regulation. Bulletin of Menningen Clinic, 58, No.2(spring), 1994. からの引用。カッコ内は斎藤学氏による註。 |