私はとにかく担任に恵まれなかったが、最高にひどかったのは小学校5,6年の時の音楽教師だ。 彼は地元では名の知れた音楽家で、地元の埋もれた民謡を集めて編曲して発表したり、「司会制」という、子供に授業の進行をさせる(大人達から見たら)斬新な教育方法でちょっとした有名人だった。何度かTVが授業を取材に来て、その度に彼は誇らしげにTVの前で笑っていた。
TVを見ている人たちは「なんていい先生なんだろう」と思っていただろう。 でも彼は最悪の教師だった。 好きな生徒にはとことん目をかけてくれるが、嫌いな生徒は徹底的に叩き潰す。 「司会制」だって彼が気に入らなければ横槍を入れられ、きちんとできるまで何回でもやり直しさせられた。泣いてもさらに追い討ちをかけるように攻め立てた。私も教壇の前で泣いたことがある。 通知表の点数も彼の気分次第だったそうだ。 彼が受け持っていた合唱部で活躍している子にはいい点を与えるが、ひとたび部活をやめてしまうと一気に点数が下がったそうだ。 授業で歌う曲もすべて彼の自作の曲。卒業式も入学式も運動会も彼が楽しげに指揮をとっていた。
そもそもTVの取材だって、学校が休みな筈の日曜日に、お気に入りのクラスの生徒を呼びつけて音楽の授業をしていたのだ。 みんな演技をしていただけだ。バラエティやドラマと何が違うんだろうか。 あの時「TVは事実を映すんじゃない。嘘を作り上げて事実に見せるんだ」と知った。
実際彼を慕う子供なんかいなかった。有名なマラソン選手を「あの子は先生の教え子なんだ」と自慢してたけど、その選手が彼の話しをしてるところなんか見たことなかった。
よく「心温まる話題」としてのぼる小学生の慈善活動や、作文発表が私にはうそ臭くみえて仕方ない。 ほんとにみんな自分でやりたいと思ってやっているのかな?先生の見栄のために駆りだされてるんじゃないのかな?ほんとはこんなことめんどくさいって思ってるんじゃないのかな?
そうじゃないのかもしれない。でもそうなのかもしれない。 少なくとも私にはいい話題に見えないのだ。
|