私は人に捨てられるのは大丈夫だ。そういうこともあるだろう。そう思う経緯は自分にある。 自分こそがいつどこへ飛んでいってしまうかわからないからだ。いつも不安でたまらない。せっかくいい仲間を増やして、場所を作ってもいつ自分がそこから居なくなってしまうかわからない。いつも私は、急にそこにいられなくなってフワリと消えてしまうのだ。ただ、「そこにいられない」というだけで。理由はたいがい見つからない。見つかったとしてもどうしてもそこから去らねばならないほどの理由ではないのだ。ただただ、そこから去らねばならないという思いに急き立てられ始める。 そうして私はいつもあっという間に消えてしまう。そんな経緯があって、人が去るのは納得できる。自分の放浪癖を赦されたいという思いもあるだろう。 ああ、だから人と関わる時はとても不安だ。自分が去ってしまわないかと。 私によくない感情を抱いている人は安心だ。私が消えてしまうことでその人が傷ついてしまわないからだ。でもなんらかの好意は非常に不安だ。もしかしたら、私なんかに恋愛も含め好意を寄せてくれる素晴らしい人を傷つけてしまうかもしれないからだ。そんなことは耐えられない。人を傷つけたくなんてないのだ。そんな酷い人間になりたくない。 でも、今の場所もきっといつか近いうちに飛び立ってしまうだろう。なんて酷い人間なんだ。 それでも私は飢えている。それも自覚がある。その渇望の思いは自分でも手が届かないほど深いところにあるけれど。
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