別に過食するわけでもなく、拒食症でもない。 でも、私はどんなに具合が悪くても、ご飯を食べずにはいられない。 今胃炎が結構ひどくて、胃薬をもらっている。 胃が痛いにも関わらず、何か食べずにいられない。 たくさんじゃないし、吐かないけど、何か食べないといられないんだ。 しかも体に悪そうな、脂っこいものとか、辛い刺激物とか。「見た目にすごくおいしそう」なものが食べたくなる。 昔、唯一満たされたのがご飯を食べる時だったからかもしれない。
昔、生活が苦しくて家にお米がなくなって、歩いてすぐのところあった親戚の家に、お米をもらってくるよう母から「おつかい」を頼まれた。 五百円玉を持って叔母のところにお米をもらいに行ったら叔母にものすごい形相で怒られた。 「お米くらい、お金なんか払わなくたってあげるわよ!」 叔母がどんな気持ちでそれを言ったのかは分からない。 ただ、自分がものすごい悪い事をした気分になって、泣きそうになりながら帰った。 母にその事を報告すると、お米と五百円を無言で受け取って、私の方を見ようとしなかった。 母も辛かったのかもしれない。今なら分かる。 でも、理由も分からず、直接叔母の攻撃を受けた私は、その辛さをどこに向けていいか分からなかった。
それから少し経って、小学校の道徳の時間かなにかで、戦時中の話を読んだ。 二人の姉妹が農家の親戚の家まで行って、お米をもらってくる話。当時は食料も配給制で、それ以外の手段で食べ物を手に入れるとすると、物々交換しかなかったらしい。物々交換で手に入れたそのお米は、二人が川を渡っている途中で転んで、背負っていた袋が破け、川にほとんど流れてしまったと書いてあった。 その話を読んだ時の侘しさと、叔母にお米をもらいに行った時侘しさは、妙に似ていて、涙を堪えるのに必死だった。
私が、「何があっても食べる」という強迫観念にも似た思いは、もしかしたらそこから来ているのかもしれないと思うようになった。
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