両親が離婚して、新しい土地に引っ越してきた頃。母が外へ出かけるたびに、『無事に戻ってくるのか、戻ってこなかったらどうしよう、知っている人は誰もいない。頼れる人は誰もいない。どうしたらいいの。早く帰ってきて』と思ってばかりいた。心が母にしがみついていた。それが今でも残っているのだろうか。自分を母から切り離そうとすればするほど、その時の気持ちが蘇る。喪失の恐れがぐっと胸を掴む。見捨てられ恐怖なのかもしれない。 実際、母がいなくなれば、私は天涯孤独に近い。そうなったら自分は透明になって消えてしまいそうな気がするのだ。…そうか。私は母を私を実体化するキーにしてしまっているのかもしれない。母の喪失=自分の喪失…と思っているのかもしれない。 それは、違う。私は私だ。自分の好む好まざるに関わらず、今ココに私は存在している。足を踏ん張れ。声を出せ。私はココにいる。誰が何と言おうと。
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