時々、子どもが現れる。 他の子をじっとみて、自分の手のひらをじっとみて、 「ねえ、ねえ、あの子はあんなにいっぱい持っているのに、どうして私には、ないの?」 と聞く。 「ねえ、いい子にしてるのに、どうしてもらえないの?」 と聞く。 時には、相手の子に向かっていって、 「どうして、あなたはそんなに持ってるの?私と取り替えようよ」 と言おうとすらする。
私が、 『あの子のものはあの子のもの』 『あなたのものはあなたのもの』 『比べてはだめよ』 なんて、なだめすかしても無駄で。 「どうして?ずるいよ?だったら私はあの子が良かった」 「私だけどうしてもらえないの?」 「ずるい。ずるいよ」 と泣き出してしまう。
何も言ってあげられない。 それが、あなたの生まれ持った運命なんだと、 そうであるがゆえに、あなたはあなたなんだ、と。 持つものには持つものの、持たざるものには持たざるものの苦悩があるはずだ、と。 そんなこと、小さな私に言っても無駄だから。 そもそも大きな私すら、多分まだ納得できていないから。
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