(251に関連して) 私の鞄の中の一箱の煙草。 生まれて一度も吸ったことのない煙草の箱。 何故?私は鞄にそれを入れているのか。 その原因を考えてみた。
私の家では私以外の家族は皆喫煙者だった。父も母も、長じては弟も。 私は煙草の煙が苦手で何度も母に吸わないようにお願いをした。花粉症にシーズンなどは特に副流煙が苦しいのだ。でも聞き入れてもらえなかった。『わかっているんだけどね…』と言ったまま吸い続けた。私は煙草をわざと水につけてダメにしたり、隠してある煙草を捨てたりした。母は外では吸わない。喫煙は見苦しいと思っているから。 つまり、母の喫煙は家族の秘密の1つだった。 家族に『こうあって欲しい』と思った願いは多くが叶えられず、その最たるものが喫煙だったのかもしれない。私は母の言いつけを守った。でも母はその、百害あって一利なしなものを決して辞めない。 だから、私は煙草を憎んでいる。 憎んでいるから持っている。 …でも、時々手が伸びそうになる。いっそそこへ、堕ちてしまおうか?私も家族と同じになってしまおうか。 そんな複雑な思いとともに、その箱は今でも鞄の中に眠っている。
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