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Fat Is a Feminist Issue - And Its Sequel

著者:Susie Orbach
出版社:Arrow Books Limited
ISBN:0-09-927154-0
定価:£6.99(UK)、$16.95(Aus)
(邦訳)
ダイエットの本はもういらない

著者:スージー・オーバック
訳者:落合恵子
出版社:飛鳥新社
ISBN:4870311968
定価:1,262円

「個人的なことは政治的である」――そして答えはすべて自分の中にある

「知ってる人は知っている」ことだと思うが、著者のスージー・オーバックは英国の故ダイアナ皇太子妃のセラピストだった人である。そしてこの本『Fat Is a Feminist Issue』はこの分野――フェミニズムと摂食の問題に関する古典的名著である。

この本はどっちかというと拒食症や過食症といった摂食障害が焦点ではない。その中間(というべきなのか)に位置する、たぶん膨大な数の女性のコンパルシブ・イーター(compulsive eater:強迫的摂食者)――と言って分かりづらけりゃ、「厳密に生理的に空腹なわけでもない時になんとなくものを食べてしまうことがよくある」「そうして自分はきっと雑誌に出てくるような“ちゃんとした、いい女”の要件を満たしていない小デブ(あるいは大デブ)なんだと思う」「だから多分、“美味しいものを食べる”ということは自分には許されていない悪なんだけど、でも今の私はダイエットして“いい女”としてデビューする前の、世をしのぶ仮の姿なので、“最後の晩餐”としてジャンクフードもガツガツ食べてるんだ」…というような自己イメージを多かれ少なかれ抱いている女性たち――に向けて書かれた本だ。

じつを言うと私はこの本に出会って、10年来のコンパルシブ・イーティングからようやく解放された。子ども時代から長年しみついて、それが当たり前だと思っていた生活習慣を変える第一歩は、まずそれを一歩引いた目で見つめ、基本のポイントを学習しなおすことだった。「まず、あなたの本当に食べたいものを食べてみなさい」と著者は言う。それがケーキであろうが、高級なスモークサーモンであろうが、ともかくやってみることだ。そんな贅沢、わたしに許されるはずがない!というなら考えてごらんなさい、今まであなたは合計どれだけのお金をやけ食いとダイエットに費やしてきたか。

本当に食べたいものを食べるにはまず、何が本当に食べたいのか、自分の感覚に注意深く問いかけてみる必要がある。書くと当たり前みたいなことなんだけども、私はこのことを10年以上も無視してきた自分に驚いたものだった。“悪い食べ物――甘いお菓子、ジャンクフード、肉類、脂っこいもの、etc.”だからイコール“本来ゆるされない、今コッソリやっておかねばならない贅沢”だと思い込んでガツガツ食べてきたポテトチップだのアイスクリームだのが、「べつに何を食べたっていい色々な食べ物の中のオプションのひとつ」になったとたん、その奇妙な“禁断の贅沢”の輝きを失った。

そして「やせた、本当の私」になったらやってみたいと思っていること――カワイイ服を着て、南の島に旅行して、キャリアアップのために颯爽と新しいお稽古事か何かに行って…――それも、今やってごらんなさい、と著者は言う。カワイイ服は11号サイズまでしかなくって、15号がないんなら、ミシン踏んで自分で作るっていう手だってある。何が本当に「太っているからできない」ことなのか、何が「本当はできるけれど“やらないこと”を選択している」ことなのか、「太っている私」「やせている私」に託したイメージはどんなものなのか。そして、「太っている自分」でいることによって密かに得をしていることは何なのか、「やせた、“ちゃんとした、いい女”の自分」になることで密かに怖れていることは何なのか。答えはすべて、自分の中にあるし、自分の中にしかない。

著者のワークショップに参加した多くの女性たちが発見していった、女性と食べ物と体重をとりまく個人の、家族の、そして社会の幻想を浮き彫りにする言葉の数々は圧巻だ。成功恐怖、母と娘の葛藤、家族の中で「食べ物を与える人」としての女性のイメージ、そして「皆に与える人」であるからには「自分は我慢する人」としての女性のイメージ…それぞれに独自な女性たちの個人的体験の後ろから徐々にはっきりと、私たちの世界においての女性と体重と食べ物をめぐる、どこか奇妙な構図が見えてくる。

じっさい、本を手にして著者の言うことを自分なりに実践してみてから私は、特別なダイエットをしたわけでもないのに、少しずつ、気がついたら10kgの体重を落として「軽肥満」から「標準」体重になっていた。その後、2、3kgの変動はあるものの、とくに「リバウンド」みたいに体重が戻ったこともない。ヒトという生物として、生き延びてくのに適正な体重を保つ機能がちゃんと自分の中にあったことを、改めて知った。

答えはすべて自分の中にある――自分にとって何がいいのか、何が悪いのか、自分の感覚に問い、自分で判断し、自分で試行錯誤していっても、何も恐ろしいことなんか起こらない。それどころか、自分と社会がからめ取られてきたムダな愚かしいゲームを降りてしまうと、本当にラクになれる。そうして、先進諸国での毎年のダイエット産業の売上げが世界の飢餓を救うことができる金額を上回るという、どこかおかしいこの世界を一歩引いた視点で見つめ、少しずつ変えていけるのもきっと、「答えはすべて自分の中にある」と確信した個人の感覚なのだ。この本との出会いによって、私はそのことを経験的に知った。

(2002/8/14 蔦吉)

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