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マンガ 子ども虐待・出口あり

著者:信田さよ子・イラ姫
出版社:講談社
ISBN:4-06-211071-7
定価:1600円+税

漫画家・イラ姫さんの公式サイト内宣伝ページへ飛びます。

ACリブの時代なのかもしれない

「子ども虐待」、と銘打ってはいるけれど、テレビでよくやっているような「子ども虐待の実態」みたいなのを期待して読み始めたら足元をすくわれる。とくに、虐待の起こるような異常な、マトモじゃない家庭や親からかよわい子どもたちを救い守り、あたたかい母性愛や家族愛の復権を、みたいな言説を期待する人々には真っ向から強烈な右ストレート!みたいな本。虐待やAC問題の周辺について一見とりとめなく話が進む対談のように見えながら、すごく革命的なメッセージを含んでいる。

何が子ども虐待の原因って、虐待の加害者には加害者意識というものがそもそもないこと、だったんだ。子供を死に至らしめる親たちは日常生活の延長として虐待行為を行っている。「ぼくは娘を性的対象として見ていないから」という言い草のもとに中2の娘と風呂に入る父親にも、「愛」という名の“正論”のもとにイネイブリング(世話焼き)とコントロールによる夫や子供の心理的飼い殺しをやめない共依存の母にも、まっとうな加害者意識なんてものはない。

だから、ACを自覚しても「甘ったれるな、自分の人生を親のせいにしやがって」という「親の側」からの言説にからめ取られてしまうと、家庭内暴力でもなんでも激化するだけだ。著者は芹沢俊介の「人間は「あなたが生まれてきたことについて、あなたには何の責任もない」という「イノセンス」を他者から承認されてはじめて、「私は私の人生について責任がある」という責任が発生する」という言葉を引いてそのことを解説している。差別され虐げられる側はいつだって、さまざまないわれのない負債で骨がらみにされてきた。最初の一歩を踏み出すために必要なのは、まずその理不尽な負債の無効宣言だ。

そして虐待というのは近代家族の強化のためにはたらいてきたドミナント(支配的)な「親の論理」――父性の復権、うるわしき「母性本能」、愛という名の正論、「〜しなさい」のコントロールの言葉、etc.――が限界に来た結果、表面化した問題であると著者は結論する。虐待は、そしてその結果としてのACの問題は、家族という権力構造の病なのだ。ならば虐待防止に「家族の強化」は間違いだ。必要なのは「親教」という「支配する側に都合のいい物語」からの脱洗脳なのだ。

女性解放運動が「男教」からの脱洗脳にほかならなかったように、「支配される側」として苦しんできた虐待被害者・元虐待被害者のACが「支配者に都合のいい物語」を一歩引いて醒めた目で見つめ、自由に捨て去り、親と子、医者と患者という「支配する側・される側」の枠組みをひっくり返していくようなパラダイム転換こそ必要とされている。そんな「ACリブ」とでも呼びたいような時代の到来を感じさせる一冊だ。

(蔦吉)

Homecoming
- Reclaiming and Championing Your Inner Child -


著者:John Bradshaw
出版社:Bantam Books
ISBN:0553353896
定価:$15.95
(邦訳)
インナーチャイルド
- 本当のあなたを取り戻す方法 -


著者:ジョン・ブラッドショー
訳者:新里里春
出版社:NHK出版
ISBN:4-14-080578-1
定価:1600円+税

自分の中のリソースに気づくための、良質なワークブック

自分の身の回りのACミーティングなんかでも話には聞いていたのだけど、瞑想の中で自分の「インナーチャイルド」と出会って云々、みたいなのを聞いて「ニューエイジ本?それともカルトか精神世界系?」とハナから食わず嫌いしていた。そうして何年か経って、回復の途上で足を取られていた時、ふとしたきっかけで記憶の底から「自分の中の小さな子供」というキーワードが浮かんできて本書を手に取った。

驚いた。これで1600円は絶対お得だ。フロイトやユングの伝統的精神分析からエリクソンやマスローの発達段階理論、さらにはNLP(最新の応用心理学の一派)まで豊富な知識をひも解きながら、子供時代それぞれの発達段階で私たちACが喪失してきたものに対し、いかに否認を解き放ち正しく嘆き悲しむか、またいかに学びそこねてきたものを回復するかということについて、平易な言葉で明晰に解説している。何よりも、(ACの特徴「頭デッカチになる」という症状をひとたび通りぬけてきた人間だからこそ)そういった博識をちっともひけらかす風でなく、「子どもっぽく」見えることを全く怖れていない著者の人間的な温かさ・懐の深さを行間から感じる。

「インナーチャイルドの再生」のエクササイズをやってみて気づいたのだけど、「子供時代の自分に出会い、肯定的な大人のパワーを持った「賢く優しい魔法使い」の自分として、小さな子供の自分を再育児する」という一連のガイデッド・イマジェリーは、たしかに多少自己を対象化しているというか、「自分で自分をかわいそうがる」というか、あるいは中島梓『タナトスの子供たち』風にいうなら「だれも守ってくれないなら、自分で自分を守ってやる保護者的人格を生み出してしまう」M・P・Dっぽいと言えなくもない。多分、あとで「自分のまとめ - 新しい思春期」の瞑想での、それぞれの年齢のインナーチャイルドがひとりずつ自分の中に順番に統合されていく、というプロセスのために、それを確信犯的にやっているのだと思うし。

しかしコレの特にいいと思うのは「親じゃなくて自分が悪い」みたいなACの思い込みがこわれないよう抑圧しているために「本当かどうかわからない」記憶の断片を「インナーチャイルド」という「事実か自分のイメージかはとりあえずどっちでもいい」心のフォルダにぽんぽんと入れておくことによって、他にも思い出せなかったことが不思議なくらい次々と浮かび上がって、自分の苦しみの原因がだんだんと分かってきたりすることがよくあることだ。そして、「賢く優しい魔法使い」といっしょに過去のイメージの中を歩いていると、安全に守られているという感覚からだろうか、学校の近くの美しい風景とか、友人たちとの楽しい思い出とか、親に侵入され支配されるばかりではなかった、記憶の底に大切に持っていた「自分の世界」の断片も、じんわりと温かく思い出されることがよくあるのだ。

ACの問題は「心の癒し」だけで終わらない、心の傷が「いわれのない雪だるま式の借金」に転化してしまう「親の論理」「支配する側の論理」からの脱洗脳が必要だし、脱洗脳したからには今度は自分のまわりの「親の論理」優位な社会とどう取り組んでいくのかという視点も必要だ、ってのが私の考えなのだけど…しかしこの本はもっぱら「心の癒し」の方になるのかもしれないけど、自分の中の生きてゆくためのリソースに気づかせてくれる、いい本だと思う。

(蔦吉)

※ちなみに、本書の「インナーチャイルドを再生する」瞑想エクササイズのBGMとして著者が推薦している、ダニエル・コビアルカ『家路』CDはこちら↓
家路

ダニエル・コビアルカ
プレム・プロモーション 1992年
定価:2.940円

アダルト・チルドレンと家族

著者:斎藤学
出版社:学陽書房
ISBN:4313860010
定価:1,553円

文庫版
ISBN:4313720480
定価:660円+税

「日本型アダルトチルドレン問題」の入門書的一冊

大学に入った頃、それまで「自分の生き方に何か問題がある、生きづらい」って漠然と思ってきたことを深く考えるようになって読んだ本の中で、最初に「うわ、これってやっぱ私のことじゃん」って問題をハッキリ指摘されたように思ったのは、本多勝一『子供たちの復讐』とコレット・ダウリング『パーフェクト・ウーマン』だった。その問題――「感情の境界線があいまいで未熟な親の完璧主義的な要求に応えようとして生きているうちに自己の感覚を発達させる機会を奪われ、親を恨みながら情緒的に親にからめ取られて生きるようになったこと」というクソ長い説明を要する問題に対し「アダルトチルドレン」という簡潔な名前と、回復への最初の指針を示してくれたのが本書だった。

「日本型」としたのは、親を恨みながら(ほとんどの場合情緒的・物理的両方の意味で)家から離れられない家庭内暴力の青年や摂食障害の女性たちのケースに多くのページを割いて丁寧な解説がなされているから。社会的にも家から切れることがわりと簡単な欧米の場合、ACたちはまず機能不全家庭の中で精神的ホームレスとして育てられ、そうして社会へ放り出されて物理的にもホームレスとなるケースが少なくない。

だから本書に代表されるAC本ブームが、ACなんて言葉を広めて若者の甘えを助長している、あからさまに悲惨なホームレスでも何でもない、親のスネかじってぬくぬくとしている連中じゃないか…ってな非難の対象にもなったのだろう。一般向けの本ということで言い足りない部分もあるだろう。が、外から見れば「何不自由ない、典型的な」日本の家族の中で子供たちが「条件つきの愛情」によって精神的ホームレスとして育てられ家に繋がれる「やさしい虐待」に最初の光を当て、回復のために自分の感じたままを語るということを肯定した、その功績は本当に大きいと思う。

(蔦吉)

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