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Homecoming
- Reclaiming and Championing
Your Inner Child
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著者:John Bradshaw
出版社:Bantam Books
ISBN:0553353896
定価:$15.95 |
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(邦訳)
インナーチャイルド
- 本当のあなたを取り戻す方法
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著者:ジョン・ブラッドショー
訳者:新里里春
出版社:NHK出版
ISBN:4-14-080578-1
定価:1600円+税 |
自分の中のリソースに気づくための、良質なワークブック
自分の身の回りのACミーティングなんかでも話には聞いていたのだけど、瞑想の中で自分の「インナーチャイルド」と出会って云々、みたいなのを聞いて「ニューエイジ本?それともカルトか精神世界系?」とハナから食わず嫌いしていた。そうして何年か経って、回復の途上で足を取られていた時、ふとしたきっかけで記憶の底から「自分の中の小さな子供」というキーワードが浮かんできて本書を手に取った。
驚いた。これで1600円は絶対お得だ。フロイトやユングの伝統的精神分析からエリクソンやマスローの発達段階理論、さらにはNLP(最新の応用心理学の一派)まで豊富な知識をひも解きながら、子供時代それぞれの発達段階で私たちACが喪失してきたものに対し、いかに否認を解き放ち正しく嘆き悲しむか、またいかに学びそこねてきたものを回復するかということについて、平易な言葉で明晰に解説している。何よりも、(ACの特徴「頭デッカチになる」という症状をひとたび通りぬけてきた人間だからこそ)そういった博識をちっともひけらかす風でなく、「子どもっぽく」見えることを全く怖れていない著者の人間的な温かさ・懐の深さを行間から感じる。
「インナーチャイルドの再生」のエクササイズをやってみて気づいたのだけど、「子供時代の自分に出会い、肯定的な大人のパワーを持った「賢く優しい魔法使い」の自分として、小さな子供の自分を再育児する」という一連のガイデッド・イマジェリーは、たしかに多少自己を対象化しているというか、「自分で自分をかわいそうがる」というか、あるいは中島梓『タナトスの子供たち』風にいうなら「だれも守ってくれないなら、自分で自分を守ってやる保護者的人格を生み出してしまう」M・P・Dっぽいと言えなくもない。多分、あとで「自分のまとめ
- 新しい思春期」の瞑想での、それぞれの年齢のインナーチャイルドがひとりずつ自分の中に順番に統合されていく、というプロセスのために、それを確信犯的にやっているのだと思うし。
しかしコレの特にいいと思うのは「親じゃなくて自分が悪い」みたいなACの思い込みがこわれないよう抑圧しているために「本当かどうかわからない」記憶の断片を「インナーチャイルド」という「事実か自分のイメージかはとりあえずどっちでもいい」心のフォルダにぽんぽんと入れておくことによって、他にも思い出せなかったことが不思議なくらい次々と浮かび上がって、自分の苦しみの原因がだんだんと分かってきたりすることがよくあることだ。そして、「賢く優しい魔法使い」といっしょに過去のイメージの中を歩いていると、安全に守られているという感覚からだろうか、学校の近くの美しい風景とか、友人たちとの楽しい思い出とか、親に侵入され支配されるばかりではなかった、記憶の底に大切に持っていた「自分の世界」の断片も、じんわりと温かく思い出されることがよくあるのだ。
ACの問題は「心の癒し」だけで終わらない、心の傷が「いわれのない雪だるま式の借金」に転化してしまう「親の論理」「支配する側の論理」からの脱洗脳が必要だし、脱洗脳したからには今度は自分のまわりの「親の論理」優位な社会とどう取り組んでいくのかという視点も必要だ、ってのが私の考えなのだけど…しかしこの本はもっぱら「心の癒し」の方になるのかもしれないけど、自分の中の生きてゆくためのリソースに気づかせてくれる、いい本だと思う。
(蔦吉)
※ちなみに、本書の「インナーチャイルドを再生する」瞑想エクササイズのBGMとして著者が推薦している、ダニエル・コビアルカ『家路』CDはこちら↓ |
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家路
ダニエル・コビアルカ
プレム・プロモーション 1992年
定価:2.940円 |